#振り返り

これまでの会社生活などの振り返りや時事

同じ穴の貉

今のウクライナが置かれている状況を私のような素人が語る資格や意義はないだろう。だが、今のSNS時代に、国連常任理事国の一つが、血縁・地縁を含め深くつながっている隣接国家への全面侵略による大量殺害・破壊を行っている姿をほぼリアルタイムで見聞きしてしまうと、国家という巨大な複合組織が持つ獰猛さに暗たんとなり、図らずもキーボードに向かってしまった。

マスコミ等の多くの論調は、国家元首の暴走と指摘しているが、一人だけでできるわけがない。多くの人や組織が強く関与しているはずだ。そう簡単に止められるはずがない。私は、今回の侵略の当事者について、今回どうのこうのと述べることは、とりあえず避けたい。

むしろ、日本を含む国際的な動きのおかしさに憤りを覚える。

例えば、ウクライナから自国民を退避させる一方で、ロシアにおける自国の活動・取引や自国民の帰国は躊躇している。少しずつ対応が進んではいるものの、なぜ、小出しで遅く、限定的なのか。算盤感情が優先するのか。この期に及んでも、ロシアの誠実さや信義を信じているのだろうか?  なぜ、自国民がロシアで拘束されたり、不当な扱いを受けるということを想定できないのか? 大使館などは、大使級の代表者を帰還させるなどの措置をなぜ取ろうとしないのか? ロシアに滞在すればするほど、偽りの情報や煽動などに取り込まれるリスクを考えないのか?

無人機もあるのに、なぜ、食料、飲料、医薬品などを支援しないのか? 赤十字や国連などは何をしているのだろう?

なぜ、ロシアからの石油、天然ガスなどの資源の輸入禁止を躊躇しているのか? 石油や天然ガス輸入禁止を宣言する国が出ているが、国際的協調のもと、一機にやらない限り、抜け道や迂回などで実効性はなくなる。

日本も、石油の約5%、石炭の12%、天然ガスの約8%をロシアに依存しているようだ。しかも、石油と天然ガスの多くは、もともと日本領土であった島からのもので、それらの開発にも深くかかわって来ている。未だに、取引を停止していないのは、約束事など平然と破る相手国に対して片思いの審議を貫こうとしているためなのか? 算盤勘定なのか? 日本が輸入しなくても他国に回るだけで実効性がないなどの言い訳が聞こえてくるが笑止といいたい。

だいたい、一方的に不可侵条約を破って日本領土を占領し、多くの在留日本人を長期にわたり過酷な条件で拘束し、戦後も、たびたび漁業関係者などを拘束してきた国との間で、まともな領土返還交渉が進むと信じているのか?  これまで、多くの血税や先端技術、人材などがロシアに流出して今の事態に至った一つの象徴的なものがサハリンプロジェクト。だれが責任をとれるのだろうか?

この際、止まっている原子炉を暫定的にでも起動させるべきだ。ロシア危機対応よりも、原子炉の再稼働リスクが大きいと信じているのか?!

カーボンニュートラルを唱えながら、原子炉を動かさず、再生可能エネルギーと、それに伴う負荷調整のために必要な天然ガスに依存するだけでは、ロシア危機に対処はできない。

ドイツの輸入天然ガスの半分以上はロシアからと聞いている。石油のほか、国内でも質の悪いものがいまだに豊富に採れる石炭さえ、ロシアが最大の輸入先とのこと。ずぶずぶの関係だ。そのようなところが、今回の危機対応にイニシアティブを発揮できるだろうか? 同じ穴のムジナといえないだろうか!! さすがに、ドイツにも原子炉の漸次閉鎖の国策を見直す動きが、ここに来てあると聞く。

ウクライナは、旧ソ連時代に欠陥原子炉を押し付けられたあげく、当局の指示による特殊試験で起きたとされる福島事故を上回る原子力災害の最大の被害者。今回、テロリストさえ行わなかった原子力発電所への武力侵攻によって占領された、このチェルノブイリ原発の事故炉の横に、事故後も10年以上発電してきた原子炉がある。石棺された事故炉以外の原子炉も廃止措置に移行しているから、いくらでも「ダーティーボム」の存在を捏造できるだろう。チェルノブイリ原発事故後も、福島事故後の日本とは違い、ウクライナはエネルギー源の多様化に努め、今の原子力発電シェアは、事故当時の3倍近くの5割を超えている。ドイツのように、天然ガスをロシアからパイプラインで提供されていれば、容易にウクライナを屈服できたかもしれない。原子力発電は有力な安全保障対策の一つだ。ただ、いずれもチェルノブイリと同じタイプで、黒鉛を含む多量の火災源があるので、占拠されれば心配だ。原子力発電所の占拠で、電力供給の遮断のほか、放射能汚染の恫喝に使うだろう。このようなことさえ、日本のマスコミや政府は包括的に伝えようとしない。

それぞれ違う側面はあるが、手をこまねいている限り、日本や欧米の多くの組織や人々は、加害国と同じ穴のムジナ、共犯者の側面を持っている。侵略が長引けば、軍需産業を含む特需が増えるはず。資源や穀物なども値上がりするだろう。窮乏する組織や人々が増える一方で、ほくそ笑む組織や人々も世界中に増える。

マスコミは今、「プーチン」個人のことばかり触れている。組織の罪はないのか? 欧米や日本にも、罪はないのだろうか? 

ウクライナは、旧ソ連解体時、米露に次ぐ核保有国であったと聞く。それをすべて廃棄するにあたっては、自らの核保有を棚に上げたうえで、核廃絶後のウクライナの安全保障を常任理事国などは約束したようだ。絵にかいたとしかいえない覚書が破られ、今も有効な支援が得られないウクライナの人々は、この覚書に騙されずに今も核を持っていれば、この惨事に見舞われなかったはずだと悔やんではいないだろうか。

世の中は、なんと不条理なのだろう。SNS時代では、惨事がリアルに伝わる。傍観している我々はなんと罪深いのだろう。同じ穴のムジナだ。